浜通信 ひと・くらし

宗谷漁協 大岬漁港 北の海で育まれたシャキシャキ食感 宗谷岬のもずく手摘み漁

浜通信 ひと・くらし(9月) 宗谷漁協 大岬漁港 北の海で育まれたシャキシャキ食感 宗谷岬のもずく手摘み漁

もずくの産地といえば沖縄周辺のイメージが強いが、真北になる稚内ももずくの産地として有名だ。もずくの種類は違うが、最北のもずくはシャキシャキの歯触りととろっとしたぬめりが超絶品だ!

 9月上旬、いよいよもずく漁の解禁だ。最北のもずく(糸もずく)は、宗谷岬沿岸の浅い磯周りに繁殖しているスギモクという海藻に付着して繁殖しているため、その採集方法はひとつひとつ丁寧に丁寧に手で摘んでいくものとなる。つまり、漁師さん方はウエットスーツ姿で腰上まで海に浸かることになる。そのため、波が少しでも高かったり潮が速かったりすると漁ができない。もちろん潮位によっても左右されてしまうため、9月上旬から10月中旬の漁期であっても数日しか出漁できない。実に漁の方法、出漁の条件ともに大変デリケートなものなのである。
 朝7時、浜に操業可能を告げる紅白の旗が上がり一斉に漁が始まった。漁場は海岸から数十メートルから200メートルほどの遠浅で棚状の沿岸。ウエットスーツに身を包んだ漁師さん方は陸からアプローチしたり磯舟で沖からアプローチしたりする。
 腰には網をぶらさげ、手には水中メガネをもち、ゆっくりと歩きながら木(漁師さんはスギモクのことを木と呼ぶ)を探し、水中メガネで海中を覗きながらその木に付着しているもずくを丁寧に一房ごと手で摘んで、腰の網に入れていく。この作業を繰り返し、網がいっぱいになると一度陸にあげて再び別の網を腰に漁を繰り返す。中には腰にふたつの網をセットしている漁師さんの姿も。そのような光景をよくよく観ていると、ウエットスーツ?なんとも不思議な姿もちらほらと。なんとあざらしだ。漁師さんの沖側にはあざらしが各々のんびりと日向ぼっこをしている!あざらしによる漁業への被害も大きいけれど、なんとなく癒される光景だ。
 9時。手摘み漁の終了だ。漁師さん方は一斉に引き上げていく。
 今回お邪魔させていただいたのは大岬の加藤憲治さん・弘美さんご夫妻。舟を車で引き上げ、網に入ったもずくを向かいの番屋へ運び、もずくに混ざっている他の海藻などを取り除く作業になる。これが最も大変な作業だ。漁場でひとつひとつ丁寧に採集されているので、そもそも他の海藻はほとんど混ざっていないような状態。それをさらに細かく見てもずくに残っている木(スギモク)の破片のような小さなものを専用のピンセット(魚の骨抜きのような器具)で掴み切除していく。  ひとつの網には20キロ近くのもずくが入っている。それを作業台に広げて選り分けていく。お手伝いさん3人が加わり5人体制でひとつの網分で70分ほどかかる。5網あるので休まず続けても350分、6時間近くかかることになる。根気の必要な作業だ。
選り分けられたもずくは塩で揉まれて塩漬けのまま暗所で貯蔵され、一部生のものはそのまま冷凍保存される。そして10月中旬、漁期終了の後、組合が集荷にまわり、それを随意契約の業者に出荷することになる。その後、店頭へ並び、シャキシャキとろとろのもずくに舌鼓を打てるというわけだ。
 希少で貴重な最北のもずくで口の中が幸福感で満たされる裏には、漁師さんの実にデリケートで丁寧な作業があった。

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