

北海道の最東端エリアにある歯舞地区では、6月から10月末までが昆布漁の操業時期と決まっている。6時のサイレンを合図にスタートした昆布漁。5メートルほどある棹の先に付いたL字のカギで、岩場に張り付いている昆布の根っこを引っ掛けて、手で引き上げる。長さ約10メートルもある昆布を船にあげるのは、かなりの重労働で力まかせにも見えるが、昆布が途中で切れてしまわないように作業は慎重だと漁師さんはいう。
操業終了の10時になるころには、黒々とした昆布が積み重なり、重さで船がずっしりと沈んで見える。これで作業終了かと思いきや、水揚げすると休む暇なく始まるのが干す作業だ。小さな石が敷き詰められた干場には、風の流れに沿って昆布が手作業で干されていく。今時期に水揚げされる「長昆布」は長いもので10メートル以上もあり、さらに乾燥する前の昆布は水分をたっぷり含んでいるのでとても重い。そんな長昆布を手作業で重ならないように並べ、乾燥させていく様子は、まさしくプロの手つき。昆布漁は水揚げから乾燥、カット、選別と、1日中作業は続いていた。
歯舞はオホーツク海と太平洋の潮流が交差することから資源豊かな漁場として、人口の約7割が漁業に従事している漁師町。そしてその歯舞の豊かな海の資源をたくさんの人々に知ってもらうために、昆布をそのまま販売するだけではなく、より多くの昆布を食べてもらうため作られたのが「はぼまい昆布しょうゆ」だ。製造が始まったのは約40年前。昆布の資源を守ることは、昆布の美味しさや食べ方をもっと知ってもらうことと考え取り組んでいる歯舞漁協。まずは手軽に昆布を食べてもらうために、どの家庭にもある調味料としてしょうゆを製造し、今やめんつゆやポン酢など、関連商品も様々だ。歯舞の海の味覚を知ってもらうことが、これからの昆布の価値を高めていくと考えたからだろう。他にも漁業では珍しい市場見学や漁民泊を行い、海の資源を知ってもらうための取り組みを続けている。