

早朝5時に出港した漁船が、各漁場から鮭を引き揚げて港に戻ってくるのは7時ごろ。網から引き上げたばかりの鮭を船底のタンクにたっぷりとのせて、船は重たそうに港に着岸した。港では荷揚げと同時に、サイズ・品質別に分けるための選別台があり、水揚げした鮭をすぐに出荷するため、いつ帰港してもいいように準備万端で待っているのだ。海から戻った漁師さんは、クレーンを使って鮭を選別台にのせ、手早く6種類のコンテナに振り分けていく。ウトロ港にある斜里第一漁協の選別台は3台。この選別台を有効に使い、次に荷揚げする漁船を待たせないようにしなくてはいけない。そのためにも、荷揚げ時の選別台の周りはとても慌ただしい。鮭が入ったコンテナ1tをフォークリフトで次々と整理しながら動かしている。まるでちょっとしたレースを見ているような速さだ。そんな中、他の港では見ない風景がウトロ港にあった。荷揚げされ選別された鮭をチェックしながら仲買人さんが手に持っているのは、他の港では見ることのない最新のタブレット。ウトロ港での入札は全てデジタルになっている。タブレットを使うことで、仲買人さんたちが広い港にある選別台から入札室を行き来することなく、どこにいても入札を行うことが出来るようになったのだ。入札は船の荷揚げごとなので、今までは入札待ちで次の船の荷揚げを待機せざる得ないことがあったが、今はこのタブレット入札でかなりの時短になっている。他にも漁師同士のLINEのグループを作って、リアルタイムで情報を共有することにより、作業を効率的に行うことが出来るになったという。海の働き方改革と言えるだろう。「漁師が効率よく仕事をするのは、漁獲量を増やして1人でも多くの人たちに鮭を美味しく食べて欲しいから!みなさんいっぱい食べてくださいね!」と漁師さんの想いは純粋だ。
そんな漁師さんたちの荷揚げ風景を一般の人も見学できるようにと、3年前に港を新しくした時に造られたのが「ウトロ鮭テラス」。テラスと言ってもカフェではなく、2階建ての駐車場から、選別台を覗き込んで見ることが出来るようにした展望台だ。鮭の水揚げ・選別・出荷されてく様子を見学出来るのは珍しく、漁業者以外にも親しみを持ってもらい「ウトロの鮭を照らす場所になってほしい」という想いが込められている。鮭の漁獲量日本一の斜里町の新しい観光施設となるだろう。