

お鍋、飯寿司、粕汁、ちゃんちゃん焼きなど、北海道では冬のお料理に馴染みのある秋鮭。9月から始まった紋別の秋鮭定置網漁は、寒い季節をむかえて活気づいていた。取材日の10月、港には早朝からたくさんのトラックが漁船の戻りを待っている。水揚げ前に入札が済み、既に買い先の決まった秋鮭をすぐに出荷できるように港で待機しているのだ。朝日が昇るころ、出航していた4隻の漁船が港に戻り始めていた。
紋別港に戻ってきた定置網漁船の翔運丸。船のタンクには秋鮭がびっしりで、全体的に沈んでいるように見えるほどだ。
翔運丸の漁師さんたちは休む間もなく次の作業が待っていた。船底から網に鮭を入れてクレーンで持ち上げ選別台へ移すと、手作業によってオスとメスを手際よく選別し、それぞれが各コンテナへと分けられていく。
「鼻が尖って尾が割れているのがオスだからすぐにわかるよ」出荷の最終チェックを行っていた紋別漁協の大澤副組合長が教えてくれた。漁師さんたちは簡単そうに作業しているが、素人が見るとなかなか判断が難しい。トラックが出荷を待っているため、素早い作業が求められる目利きは漁師さんには重要な作業だ。
大澤副組合長がもうひとつ教えてくれたのが、紋別での育てる漁業の取り組みにについて。紋別の漁師さんは約15年前より「海中飼育放流」に力を入れているのだ。鮭稚魚の放流には2種類あって、孵化場で育てた稚魚を川に放流する 「河川放流」と、海のいけすで育てて放流する「海中飼育放流」。1日1回の餌で育てる海中飼育では、通常より育てる期間が短く、鮭が戻ってくる率が高いことから、オホーツク地区では積極的に取り組んでいる。今年水揚げされているのは主に4年前に海中飼育後放流した鮭たち。大澤副組合長をはじめ地元漁師さんの育てる漁業の取り組みがあるからこそ、順調に漁が行われているのだろう。