

午前7時、雨模様のウトロ漁港に水揚げ開始のアナウンスが響き渡ると、船着き場で待ち構えていた幾隻もの漁船から、ザバーッ!と豪快な水音を上げて大量の秋鮭が一斉に水揚げされた。ウトロ漁港の今シーズンの秋鮭漁は9月6日にスタート。初雪が降り始める11月25日まで続き、その間、漁港は秋鮭一色に染まる。操業漁船は15隻。約1万7000トンの水揚げ量は、漁港別で北海道トップクラスだ。
北海道のなかでも、とりわけ手つかずの大自然に恵まれた知床の秋鮭は、がっしりと肉厚で脂ののりがよく“知床ブランド”として人気が高い。水揚げ時の細かい仕分けは、その品質を守るための大切な作業の一つ。クレーンに吊るされた大きな網で一気に水揚げした鮭は、10名以上のスタッフがすばやくかつ正確に見極め、銀色に輝く高級魚・銀毛や成熟したブナ、さらにはサイズ、オス・メス、傷モノなど6種類にも分別される。取材日の水揚げ量は約430トン。黙々と仕分けする手さばきに迷いはなく、1トンものステンレスタンクは、あっという間に満杯に。「鮮度が命だからね。仕分けもスピード勝負さ」と、降りしきる雨をものともせず、忙しく手を動かすベテランの漁師さん。朝の水揚げ開始から大漁の日は夕方まで、この仕分け作業が延々と続く。選別済みのタンクはフォークリフトで次々と運ばれ、重量をチェック。入札に備えて、その場で値踏みされてゆく。大網の中で踊る秋鮭と途切れることなく続く豪快な選別作業、くるくると目まぐるしく動き回るフォークリフト……。目の前に広がる穏やかなオホーツクの海とは対照的に、漁港には活気と熱気があふれている。
そんな水揚げ作業に湧く漁港の一角に、ウトロ漁協の女性部が営む小さな食堂を見つけ、暖簾をくぐってみた。熱々のご飯に、秋鮭のほぐし身とつやつやと輝くイクラの醤油漬けがたっぷりのった「鮭親子丼」を豪快に頬張る。ふっくらとした身ととろりと濃厚なイクラの旨味が口の中で渾然一体となって、何とも豊かでシアワセな気分に……。窓の外では、まだまだ水揚げ作業が続いている。オホーツクの恵みと漁師さんの奮闘に感謝しつつ、“知床ブランド”の誇りをじっくりと味わった。