

すけとうだらは寒くなり始める11月から1月に、乙部と熊石の間にある産卵場所に戻ってくる。延縄漁はこの限られた冬の期間の漁とされている。乙部漁港は他に豊浜・熊石の3地域で爾志海区と呼ばれ、約30隻の船団が協力しながらすけとうだらの延縄漁をおこなっていた。
漁に出るかどうかは爾志海区の各船団長3人がその日の天候をみて判断。ほかにも、どこの海域で漁をするか、どのように各漁船の配置をするかを話し合って決めている。乙部の船団長は毎朝、漁港のみえる高台の宮の森公園に行き、ある岩のちかくにたつ波をみてその日の海の様子を予想するというのだから、天気予報よりもよっぽど当たるのだろう。「今朝の早い時間は微妙な天気だったけど、俺はいけると思った!」と断言する船団長の漁師の海をみる力はすごい。昨日の大時化が考えられないほど、今日の海は波のないおだやかな一日となったのだった。
延縄漁は50mほどの縄に100本の針をつけて釣り上げるので、底引や刺網漁法とは違い魚の体に傷がつきづらく、魚にとってストレスがないのが特徴。その日は朝4時に出港し11時ごろになると次々と漁船が戻ってきた。お昼頃水揚げされたすけとうだらは2時には入札され、すぐに加工所でタラコとなる卵を取り出し、鮮度のよい状態で加工されて「釣り子タラコ」として販売されている。
ここ数年はすけとうだらの水揚げ量が減っているが、今年は去年の2倍以上のペースで獲れているらしく、漁から戻った船の中にはたくさんのすけとうだらがみえていた。今年獲れるのは2006年級群といわれる6年前に生まれたすけとうだらで約40cmから45cm。11月はまだ卵は少し小ぶりだが12月10日頃からは大きくなり立派なタラコがとれると教えてくれた。これから本格的な冬の寒さが始まるのと同時にすけとうだらの延縄漁も最盛期となってくる。