

北海道の南西部、日本海沿岸に位置する島牧の厚瀬(あっちゃせ)漁港では、3月下旬から5月中旬にかけてサクラマスの水揚げが行われている。見た目の美しさと上品な味わいに加えて、最近では数が激減したことから「幻の魚」と呼ばれているサクラマス。春の始まりを教えてくれる日本海のサクラマス漁は5月に入り最後の盛り上がりをみせていた。
島牧の厚瀬漁港を訪れたのはサクラマス漁がクライマックスを迎えている5月上旬。サクラマス漁という名前からして春を感じさせそうな漁だが、取材で訪れた日の島牧はおもわず肩をすくませるような冷たい風が吹き、桜の開花はまだ少し先のようだった。
朝5時に出港した丸和丸(まるわまる)が港に戻ったのは1時間半後。帰港した船上には箱に詰められたサクラマスの他にもコンテナいっぱいのホッケが揚げられていた。島牧では定まった漁場に巨大な網を設置し、魚の習性を利用して網に誘いこむ大定置網漁(だいていちあみりょう)で漁獲しているので、時期によってかかる魚はさまざまなようだ。「今の時期はサクラマスやホッケやヤリイカ、もう少しするとブリが獲れ始める。マグロが獲れるときもあるので、そんな時はテンションあがるね。桜が終わるころ、サクラマス漁も終わるから今シーズンもあともう少しだな」と話してくれたのは丸和丸船長の濱野さん。船上から下されていくサクラマスは濱野さんが数と重さを量り、漁協職員さんがチェックし、漁師さんがセリに向けて綺麗に積み上げていく。多い日は1tほどの水揚げがあるというサクラマス。今日の水揚げは300~400kg。けっして多くはないが去年の水揚量はかなり悪かったので今年はまだいい方だという。漁師さんお勧めの食べ方を聞いてみると、塩焼きと意外にもフライパンで焼くポワレ。美味しいからこそシンプルな調理があうサクラマスは、3月から5月までという短い期間しか出荷されない春を代表する日本海の味覚だろう。