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石狩湾のシャコ漁
石狩湾のシャコ漁
北海道で唯一、シャコの刺し網漁が行われる石狩湾沿岸。年2回の漁期は、産卵前の子持ちを狙う4~6月と、脱皮後の身入りのいいシャコを獲る10~11月と、チャンスはわずかだ。台風明けを待って、秋漁が本格的に始まった石狩湾新港を訪ねた。

透明度が高い石狩湾に棲息するシャコは、時化(しけ)で海が荒れ、海底が濁ると、餌を求めて一斉に巣穴から出てくるという。シャコ刺し網漁は、そんな習性を利用するため、荒天の前に投網しておき、天候が穏やかになってから水揚げする。一般的な漁業とは異なり、時化の日が多いほど、操業日も増えるという、特殊な漁業だ。
石狩湾漁業協同組合石狩支所では、秋シャコ漁が10月15日に解禁され、11月末まで3隻の漁船が操業する。秋漁真っ只中の石狩湾新港を訪れたのは10月下旬。まだほの暗い朝6時前、漁港に降り立つと、ちょうど堤防の向こうから漁を終えた漁船が近づいてきた。停泊するやいなや、待ち構えていたトラックの荷台へ、シャコのかごが次々とクレーンに吊られて運ばれていく。荷積みを終えたトラックは、すぐに作業小屋へ。
ここから作業小屋で始まる網はずしが大仕事なのだ。刺し網ごと入ったカゴがずらりと並ぶその横に、10名ほどのスタッフが腰掛けて、網をたぐりながら、シャコに絡まった網を一本一本ほどいていく。シャコは触角や鎌のような脚、鋭いトゲのある尾扇を持つため、魚の何倍も作業が細かく、その分時間も要する。とはいえ、シャコは鮮度が落ちやすく、生きているうちにゆでないと殻が取り外しにくいため、網はずしの作業はスピードも重要。しかも、脚や尾扇が折れると価値が下がるので、丁寧さも求められる。ベテランの作業員さんたちは、にこやかにおしゃべりしながらも、片時も手を止めることはない。朝日が差し込む作業小屋には、穏やかな雰囲気の中にも“真剣勝負”の凛とした空気が漂っている。
網はずしの作業が進むと同時に始まるのが、巨大な釜を使ったゆで上げ作業。白い湯気がもうもうと立ち昇る釜の中に、オス・メスに選別したシャコをザザッ!と入れ、熱が均等に入るよう木の棒でゆっくりとかき混ぜる。甘みを引き出し、ふっくらゆで上げるには、湯の塩加減とゆで時間が決め手だ。何度も差し水をしながら、ゆで加減を見極め、10分ほどで一気に引き揚げる。これをいったん外気で冷やした後、一尾ずつ定規で計測し、大・中・小と3サイズに分別し、氷を敷き詰めた発泡スチロールに並べて、ようやく出荷だ。
「ゆでたてが一番うまいよ。ほら」。ゆで上がったばかりのシャコを、漁師さんがハサミでさばいて手渡してくれた。さっそく肉厚の身を頬張ると、ぷりっとしなやかな歯ごたえと、コクのある甘みが広がり、エビやカニと似ていながら、非なるおいしさ――。石狩湾が誇る、秋ならではのとっておきのごちそうである。

  • <シャコの荷揚げ作業> 船上に積まれたシャコのかごを4つずつクレーンで吊り上げ、トラックの荷台へ。 かごの中には、水揚げした刺し網が丸ごと収められており、そのまま作業小屋へ運ばれる。
  • <水揚げされたばかりのシャコ> 網にかかった新鮮なシャコ。水揚げしたばかりの体は、ややグレーがかった琥珀色に近い。 甲長は全長の約5分の1を占め、背面中央にY字状の隆起線があるのが特徴。
  • <網はずしの作業小屋> シャコのかごが整然と並ぶ作業小屋。網からはずしたシャコは、オス・メスに分別される。 刺し網からは、カレイやカジカ、ワタリガニなどさまざまな魚介類も一緒に現れる。
  • <網はずしの作業> 脚や尾扇が折れないよう、慎重に網から外すのは、とても骨が折れる作業。 シャコの体にはするどいトゲがあるので、厚手のゴム手袋は必需品だ。
  • <カギの先端を研ぐ> 網はずしの作業に使われる“カギ”と呼ばれる道具。 先端についたL字の金具を器用に動かし、シャコに絡まった網をはずすため、作業前にはよく研いでおく。
  • <ゆで上げ作業> 作業小屋で網からはずし、オス・メスに選別されたシャコは、鮮度がおちないうちに塩ゆでに。 水揚げ後、すぐにゆでることで食感や甘みをそのまま保つことができる。
  • <サイズごとに分別する> サイズは8~13㎝未満の小、13~16㎝未満の中、16㎝以上の大の3種類に分別。 一尾ずつ手に取り、定規で測って振り分ける。なかには、20㎝以上の大物も!
  • <ゆでたてのシャコ> 頭部を落とし、両サイドの腹部にハサミを入れると、きれいに身が取り出せる。 ゆでたてのシャコは、ぷりっと弾力があり、程よい塩気が甘みを一層引き立てる。
  • <網さやめ> 網はずしが終わった後は、 “網さやめ”の作業へ。海藻やゴミを取り除き、破れた箇所を補修するなど、次回の漁に備えて刺し網を整える。
  • <いよいよ出荷> オス・メスごと3サイズに分別したシャコは、それぞれ箱詰めされ、いよいよ出荷。 氷を敷き詰めた発泡スチロール箱の中に、120尾ずつきれいに並べて収められる。