

漢字で“鱈”と書く通り、雪が降る季節に旬を迎えるたら。なかでも真だらは、鍋や塩焼きはもちろん、真だちと呼ばれるオスの精巣は高級食材として人気が高く、北海道を代表する“冬の味覚”の一つだ。10月からスタートした真だちの刺し網漁で賑わう、新春の釧路港を訪ねてみた。
太平洋沿岸に位置する釧路は、北洋漁業の基地として発展してきた道内有数の一大漁場。
大型で脂肪を多く含んだ動物性プランクトンが大量に生息する釧路沖は、栄養価の高い海水に恵まれ、さんまやほっけ、ししゃもなど、年間を通じて数々の“釧路ブランド”が水揚げされる。10月から厳冬期にかけての刺し網漁の主役は、丸々と太った真だらだ。
出港は深夜前。夜10~11時頃に沖合のポイントへ向かい、刺し網を引き揚げ、早朝5~6時頃に帰港する。陸揚げした後は、真だらを傷付けないよう網から外し、仕分け、さらには網に絡まったゴミや海藻を取り除き、再び仕掛けるための“網さやめ”の作業が続く。
仕分けされた真だらは、釧路漁港内の市場に運ばれ、オス・メス、サイズ、キズ物など細かい規格に沿って10種類以上に分類される。ただし、真だらの外見はオス・メスの違いがないため見た目では判別できない。そのため、漁協の職員が一尾一尾、真だらの腹に指を入れて精巣と卵巣を確認し、オス・メスを選別するのだ。
ちなみに真だらは、日本に分布するたら類の中で最大種。市場に並ぶプラスチックの魚函をのぞいてみると、ぷっくりとお腹が膨れ、なかには体長1mを超える巨体も。初めて目にするビッグサイズの迫力に思わず目を奪われてしまった。
最も高値で扱われるのは、成熟した真だちをたっぷり抱えた大型のオス。赤身を帯びた未成熟の物ではなく、真っ白でプリッと弾力がある成熟した真だちほど人気が高く、寒さが厳しくなるにつれその成熟度も増していくという。
ふっくら肉厚で淡白な味わいの身は、鍋物や昆布〆、焼き物に、クリーミーな真だちは天ぷらや味噌汁に、大粒の卵巣は煮付けにと、捨てるところがない真だら。厳寒の海がもたらす冬ならではの味覚を、余すところなく味わいたい。