

取材日当日は数日前から続く時化で船が出られなかった。しかし、上磯郡漁業協同組合の知内中ノ川支所内に入ると、そこにはサイズごとに分けられたマコガレイが生け簀にたくさん入っていた。活魚での出荷待ちだ。
知内町は中ノ川漁港、そこは木古内湾の西側、長い砂浜のほぼ中央に位置している。が、湾とは言え、目の前は潮の流れも速くて強い津軽海峡。その海峡に面していると言ってよい。そのためこの知内沖は津軽暖流の影響下にあり、海水温が比較的高めである。どちらかというと高めの海水温を好むマコガレイにとっては、その生息環境として適していると言える。
その前浜に底建網を仕掛けて漁獲する。暖流だけではなく、太平洋からの栄養ある親潮の恵みもある海域である。もちろんマコガレイばかりではなく、良型のヒラメやホッケ、アブラコ(アイナメ)、ソイ類、トウベツカジカ(ケムシカジカ)などなど、ここに書ききれないくらい豊富な魚種が旬の時期に漁獲される。言い方をかえると、エビ・カニ・マグロ以外が漁獲できるとも言えるほどだ。
また、ここでは底建網漁ばかりではなく、カキやホタテの養殖も盛んに行われており、この日も早朝からホタテの出荷作業が行われていた。暖流と親潮に恵まれた海域、そこで育つカキやホタテは味が濃くてとても美味だ。特筆は義務であるノロウィルスの検査だが、週1回行われるその検査を自主的に週2回行うことにより、さらに高い安全性を維持することに努めている点である。味と安定した量と同時に高い安全性は、消費者にとっては購入する際の大きな事柄である。
前浜の底建網漁の話に戻ろう。メインであるマコガレイは周年通して漁獲できる。夏には身が厚くなりその美味しさが増し、冬には卵が大きくなりその煮付けに舌鼓を打ちたくなる。つまり周年通して美味しく、それが周年通して漁獲出来るというわけだ。しかし、漁師さんたちは2月から4月の間網をいれない。それは、マコガレイの産卵期とイコールの期間だ。つまり漁師さんたちは周年獲れるマコガレイの資源量を継続するために、自主的にその産卵期を見守っているということだ。
津軽海峡に面した中ノ川には、安全性と資源保護に重きをおきながら漁業を営む漁師さんたちがいた。