

11月下旬、午前3時。天には星が輝き、三日月がくっきりと浮かぶ。気温は氷点下。陸の水たまりはガチガチにしばれている。この時期の氷点下は、まだ寒さに慣れていない身体には特にキツい。その中を船は港を後にした。目指すは150m以深の海域。片道2時間半はかかるエリアだ。
天売・焼尻島を超えたさらに沖の漁場に着くと、ちょうど日の出とともに操業開始だ。
網を入れ、それを上げることを繰り返すことになるが、水深180mあたりまで降ろすだけで時間がかかる。午後3時くらいまで作業が続けられるが、5~7回ほど網を入れられるかどうかといった具合だ。沖では網を入れている間に、漁獲した魚を選別する作業が同時に行われる。一時も休んでいる暇などない。網に入る魚種は煮付け抜群、焼いても揚げても生でも最高といった赤がれいを筆頭にマダラ、ホッケ、ハッカク、ナベコワシ(トゲカジカ)、カスベ、ヤナギノマイにニシンにハタハタ、そしてボタンと南蛮といったエビたちと実に豊富だ。エビは全て活。魚も大きなものは沖〆にされる。その作業を氷点下の中、船上で行なっているわけである。
午後4時になると日が沈むこの時期。5時にもなると漆喰の闇。その中、船は帰港した。
迅速な作業でどんどん市場へ運びこまれる魚やエビたち。その量におどろく。
市場では漁獲したものを大きさで選別していく。より美味しく食べてもらいたいとの思いから、漁師さんたちのその手際の良さには圧巻だ。どこにも無駄がなく、とにかく正確でとにかく速い。未来の漁師さんもすでに手練なお手伝いをする。そして瞬く間に魚種ごとの中でサイズにより選別され、並べられた。エビは全て活なので、勢い良く跳ねてしまうため蓋がされる。赤がれいも真っ赤なその裏側をみせてきれいに並べられる。木箱は1箱10キロ、発泡のケースは5キロ。数字は1箱に入っている匹数。「5」とあれば、赤がれい1枚1キロのサイズということだ。この大きさになると、その身も厚く刺身でいただくには最高のものだ。
迅速な作業で市場に並べられた赤がれいたちは、この後すぐにセリにかけられ、翌日には店頭に並ぶ。もちろん赤がれいは真っ赤に染まっている。その赤さは漁師さんたちの大切な思いが込められている……。