

知る人ぞ知る、大津の秋鮭の美味しさ。北海道南東、十勝川河口にある大津漁港で獲れる秋鮭の魅力を知り、わざわざ釧路から買いに来る人もいるという。漁協女性部が毎年9月に曜日限定で開催している直売は、早朝6時半オープンにも関わらず長蛇の列となり、売り切れてしまうほどの人気ぶりだ。人口約300人の小さな地域は、秋鮭漁の解禁と同時に賑わいをみせる。
美味しさの理由は、広大な十勝川河口という環境。広く長い河を遡上するために鮭はたっぷりの体力をつける必要があり、そのために脂がのって身がふっくらと厚くなる。地元の人のおススメはさっと塩をふって焼くシンプルな塩焼き。食べてみると秋鮭本来の旨みを堪能でき、ご飯が何杯でもすすみそうだ。
秋鮭定置網漁の漁期は毎年8月下旬から11月中旬。あたりが真っ暗な午前3時頃に11隻の漁船が出港していく。岸側から沖にかけて約2000メートルの網を仕掛け、4カ所のポイントに鮭が集まるように設置しているのは、網に沿って泳ぐ習性を利用した考えられた仕掛だ。今年は台風や爆弾低気圧の影響で漁ができないだけはなく、網が壊れてしまうこともあり、漁師さんの苦労は多いという。それでも大津の秋鮭を楽しみにしている人に食べてもらいたいという思いで、寒さが厳しくなる10月以降も気合をいれて出港していくのだ。港に船が戻ったのは早朝6時頃。船の底にある大きなタンクには銀色の鮭がびっしりと詰まっていた。漁船1隻の平均水揚量は1日約5000尾。船から下すと同時に選別場でオスとメスに手早く分けられていく。卵を持つメスのほうが値段は高くつくが、卵に栄養をとられないオスのほうが鮭本来の身の味はよい。スーパーで切り身になっている鮭ではオスメスの区別はつかないので、旬の今、好みの味どちらかを選んで1匹ごと購入するのも、この時期ならでは贅沢な楽しみ方となるだろう。