

真夜中、午前0時。
真っ暗な港から、船が一斉に噴火湾の沖にある前日に海中へ投入したえびかごを目指して出港した。
えびかごを沈めたポイントへ着くと、海底からえびかごを引き上げる。ヒトデなどを迅速に取り除きぼたんえびだけを雄雌・サイズ毎に大まかに選別してプラスチックのかごへ移すと、そのまま鮮度保持のためにすぐに生簀へ入れる。一方でえびかごは再び餌を入れて海中へ投入する。えびかごの数は一隻あたり、300個まで。帰港は翌朝の6時から9時頃なので、往復の移動時間を差し引いた時間、びっしりとこの一連の作業が続けられることになる。
午前6時をすぎるとえびを満載に積んだ船が戻ってきた。
接岸すると同時に、船上では雄、雌、大、小と細かく選別され、一旦船上の生簀へ入れて鮮度を保持する。雌はお腹に碧翠の卵をびっしりと抱いている。赤い身体に碧翠の色合いが、とっても綺麗で食欲がそそられてしまう。雄はよりいっそう赤が目立ち、胸部の白い斑紋が光ってみえる。
選別が終わるとすぐに市場へ運ばれる。計りには一段、二段、三段とプラスチックのかごが積み上げられ、目盛りも12、20、32キロとどんどん重くなっていく。計測が終わると、えびはすぐに生簀に入れられた。とにかく鮮度重視で全ての行動が迅速。当然ぼたんえびの鮮度は抜群で、かごの中でビチビチと跳ねているのが見える。
噴火湾は魚種が豊富で、この日は、ぼたんえびの他にたらばがにやずわいがに、20キロ以上のみずだこも出荷されていたり、あかがれいやそうはちがれいも大漁、まだらにいなだ、かじかの類いにかすべやあぶらこ、ほっけ、つぶの類いも並んでいた。この時期はそんな中でもぼたんえびがより山積みされるのだ。
競りの時間。ぼたんえびがびっしりと入ったプラスチックのかごの周りを仲買人が囲み、蓋を開けて中を確認しようとすると、えびがビチビチと跳ねて出てきてしまう。それほどに鮮度が良いのだ。そしてどんどん値がついていく。
この鮮度の良さと山積みの量は漁師さん方の矜持だ。