

港は穏やかで波はなかったが、沖の様子は違ったようだ。出港してからすぐに1隻の船が戻ってきた。
港から30分ほどにある漁場は水深約30mで、定置網の長さは約250~300m。紋別の漁師さんには各自決められた2ヶ所の漁場があり、出港後はそれぞれの判断で漁を続けるか終了するかを決めている。この日の沖は船が傾くほど波が高かった。漁師さんの仕事は命の危険と隣り合わせとなることもあるため、漁を続けるか止めるかの判断はとても重要だという。秋鮭漁の最盛期となる時期に漁を休むことは悔しいが、一緒に船に乗っている仲間の安全を第一に考えなくてはならない。ホタテ漁の船14隻も早々に漁を切り上げて港へ戻り待機となっている。「安全第一」これが守られてこそ、漁を続けることが出来るのだと漁師さんが教えてくれた。
残りの3隻の漁場は離れていたため操業を続け、港に戻ったのは明るくなった7時ごろ。港には船から水揚げされた秋鮭がそのまま選別台を通り、出荷できるようになっている。船の大きなクレーンを使い、一度にすくい上げる秋鮭は約200匹。傷が付いてないか、他の魚が混ざっていないか。素早く見分け選別する。手慣れた漁師さんたちによって、あっという間に作業が進む。
「今日の水揚げは3隻で約1万匹!」戻ってきた漁船は獲れた秋鮭の重みで、ずっしりと深く海に沈んでいた。それでも、ピークの年に比べて1/3ぐらいに減っているのだ。天候影響や海水の温度が上昇しているのが原因だという。確かに、水揚げされた網の中には水温が高い場所を好む「ブリ」や「くらげ」が紛れている。環境の変化によって、北海道の秋鮭漁全体の漁獲量は減少しているが、オホーツク海はまだ一定の量を獲ることができていると教えてくれた。資源豊かな海の恵みに感謝し、今年も旬の秋鮭をいただこう。