

3月になるとほっけ漁がはじまるが、産卵明けなので、本格的な漁はしない。雪がとけ、季節が進んだ5月。陸の桜が満開を迎える頃、積丹ブルーな紺碧広がる古平の前浜にいよいよ魚の花が咲き始める。魚へんに花と記して、ほっけ。本格的なほっけ漁のはじまりだ。
まだまだ肌寒い深夜2時、漁場へ向かい港を後にする。漁場は7マイル(約11km)ほど沖合だ。水深120から130mライン。ポイントへ着くと刺し網を底まで落とし込む。3枚の網全てを設置完了した頃、時計の針は3時を指す。それから3時間後、午前6時を目処に網を引き上げる。
網を上げるとかれい、たら、はっかく、そいに混じりほっけがどんどん上がってくる。掛かっているほっけを手際良く外し、すぐに海水と氷がびっちりつまったタンクへ入れられる。とにかく鮮度が重要だ。網は船尾へ送られ、翌日の漁へ備えられる。全ての網を上げてほっけの処理を終えると、急いで帰港だ。
船を待つ港では仕分けの準備が進められている。
魚がびっちりつまったタンクをクレーンを使い荷揚げする。陸に上げられた魚たちはシートの上に豪快に広げられる。かれいがまるで絨毯の模様のように見えるほど。そして漁獲したほっけを広げるとそこにはまさに魚の花が満開に咲き乱れているようなシーンが広がった。
広げられた魚たちは迅速に種類とサイズで分けられ、氷が敷き詰められた発泡のケースに並べられていく。
ほっけは大中小のサイズで分けられる。1箱、17尾入り、14尾入り、そして大型のほっけは1箱で8尾並ぶ。まるまるでっぷりとした姿はどこか愛らしい。そしてほっけが綺麗に並べられた発泡をトラックで市場まで運び、後片付けを終えて次の漁の準備を整えるとやっと1日の終わりだ。午後も2時になろうとしていた。
一方、市場へ運ばれたほっけは午後1時から競りにかけられるが、開始早々一瞬で競り落とされた。
このほっけ漁は10月ころまで連日続けられる。最盛期は6月から7月。これからますますほっけの花が、それもまるまると太った大輪が咲くことになる。居酒屋でも定番の中の定番、ほっけの開きは美味すぎる。ほっけのフライも最高だ。その陰には漁師さんがたの美味しく食べてもらいたいという思いと、手練れかつ迅速な作業があった。