

7月から始まる宗谷の昆布漁。北海道の最北端に位置する宗谷漁協では、オホーツク側から日本海側に東西へと広がる約35キロの漁場がある。エリア内であれば、早朝からの決められた時間内で、漁師各自が自由に漁をすることができるようになっているため、昆布が集まる漁場にはたくさんの漁船が密集している。
その中でもベテラン漁師さんの昆布への目利きはすごい。海底を覗く大きな水中メガネを使って、品質の良い昆布をササっと見分けている。「うまい=漁獲適正時の昆布」だと教えてくれた。漁獲適正時の根は剥がれやすいが、熟しすぎるとガッチリと岩場にくっついて取れづらいのだ。同じ時間や場所でも漁師によって採る量が違うのは、うまい昆布を見極めることが出来かどうかだとベテランの漁師さんがいう。そして、もう一つ大切なのが、干す作業だ。
夏の宗谷の海沿いをドライブしていると、昆布を一つ一つ手作業で干場に干す作業を目にする。潮風にのって、ほんのりと昆布の香りが漂う風景だ。昔は海が穏やかな凪であっても、霧がかかっていたり、太陽が隠れて風が吹かない日は、天日干しできないため、仕方なく昆布漁はお休みにしていたことが多かった。昆布漁に欠かせない「風」をもつ宗谷だが、地形的に霧雨が多く、完全に昆布を外で乾燥させるのは難しい。そのため、昆布漁師の作業場には専門の乾燥室が作られ、しっかりと乾燥させて品質の良い昆布を出荷するように努力をしている。海から水揚げした昆布は水分が抜け始めると昆布同士がくっついてしまうため、水揚げするとすぐに砂利浜で重ならないよう並べ始める。まずは砂利の隙間から潮風が抜けて昆布の旨味をたっぷりと蓄える天日干し。そして仕上げは乾燥室でしっかりと水分を抜くのだ。最初は30度前後の温度で数時間、最終の乾燥には高温の50度へと温度調整をしている。その日の昆布の状態を見ながら、漁師さんの判断で乾燥法方は違う。霧雨が多い地域だからこそ、ほとんどの漁師さんが乾燥室を整えて、独自の乾燥技術を持っている。出来上がった商品の品質へのこだわりだ。