

朝7時すぎ、爽やかな秋晴れの碧天の下、漁師さん方が出漁の準備を始める。氷を運び、船倉に詰め、それに海水を混ぜて準備完了だ。そしていよいよ出船だ。目指すは漁港の前浜沖を東へ10分ほど進んだ先だ。そこに大きな秋鮭定置網が仕掛けられている。
漁場につくと、漁師さん方はみんなで力を合わせて定置網の最も奥まった部分の網をおこす。阿吽の呼吸で網を手繰り寄せると、そのずっしりとした手応えに秋鮭の息吹を感じ、さらに力が入る。船べりまで寄せると海面は暴れる秋鮭の水しぶきで騒がしいが、それが嬉しい。
そして秋鮭をたも網と船上のクレーンを使い掬い上げて船倉へいれていく。それをおこした網に秋鮭がいなくなるまで繰り返されるが、かなりの力仕事が続くことになる。
船倉にいっぱいの秋鮭を積んで帰港だ。
戻ると同時にすぐに秋鮭を先ほどとは逆に船倉にたも網を入れて掬すくい出し、岸壁に設置してある選別台へ広げる。
広げられた秋鮭はすぐにオスメス、サイズ(重量/2.7kgより重いか軽いか)、さらに婚姻色の入り具合(成熟度)で一瞬に分けられていく。
国内最北端の宗谷岬に近いここ東浦海域の秋鮭は、もちろん時期にもよるのだが、10月に入っても婚姻色の少ない銀ピカに輝く秋鮭が多く漁獲されるという。この日も婚姻色の強い秋鮭はほとんどおらず、反対に銀ピカにギラギラと輝く秋鮭が多かった。とくにメスのほとんどが銀ピカに輝く個体で、抜群に美味しそうにみえる。きっとお腹の筋子も柔らかくてとても美味しいだろう。
選別された秋鮭は素早く計量され、旨味を逃さないようにすぐに氷漬けにされるのだが、ここまでの所要時間はものの30分程度という迅速さだ。北海道中、各地域の漁師さん方の作業は全く無駄がなく、そして驚くほど早いが、東浦の漁師さん方は輪をかけて早い。食卓を美味しく飾ってくれる魚介類の裏にはこういった漁師さん方の仕事っぷりがあるとあらためて実感する。
秋真っ盛りの日本最北の海域には、銀ピカに輝く秋鮭とより美味しい秋鮭を届けたいとの思いを強く抱く漁師さん方がいた。