

鵡川でほっき貝が水揚げされるのは、春の産卵期を除く10ヶ月間。 食べる人たちが喜んでくれることを考え、 漁師さんたちそれぞれが、こだわりを持って 漁に取り組んでいる。
鵡川では漁師1人あたり1シーズンで、ほっき漁の操業ができるのは僅か14日。しかも漁獲許容量5トンまでと限られている。決められた日数と漁獲量の中、季節によってどんな需要があるかを自ら考えながら漁に出ているのだ。寒くなる12月はほっき貝の身がひきしまり、旨さがギュッとつまっていて味は抜群。ちょうど年末年始に向けて贈答用の需要が増えていく季節だからこそ、今時期は大きくて綺麗なほっき貝が喜ばれると考えて漁を行なっている。鵡川産の価値を高めようとする漁師さんのこだわりだ。
ほっき漁は、幅1メートルほどのマンガンと呼ばれる道具に網をつなげて、海底におろす「噴流式縦引網」という漁法。マンガンに付いている数十個の赤いノズルから、高圧ポンプで海水を噴射し、海底の砂地を掘り起こしてほっき貝を後ろの網へと送り漁獲している。漁師さんこだわりの作業は網を船に揚げてからだ。資源保護のため9センチ未満のサイズは海に戻すように定めているが、贈答用向けのほっき貝への需要が高い今時期は、自ら基準を上げて選別を行なっている。9センチ以上でも海に戻し、より良いほっき貝を探し始めるのだ。しかしそのためには、引き揚げたほっき貝の7割以上を海に戻し、最初から作業をやりなおすこともある。マンガンと網を海に降ろす回数が増えると、漁師さんにとっては手間と時間が倍以上かかる。それでも食べてもらう人たちに喜んでもらいたいという想いから、漁師さんそれぞれが自主的に高い基準を持って取り組んでいる。基準へのこだわりは、誰から指示されたものではなく、ひとりひとりが持つ仕事への意識の高さである。そのような努力があるからこそ、鵡川産のほっき貝しか購入しないというお客さんの嬉しい声が増え始めているのだろう。